「黄泉還り。其れは不正義ではありますが、其々に正義があるのもまた否定できません。
けれども僕は僕の正義を執行した。……それに大きな違いはないでしょう」
「正義(きょうき)を題材にした大衆演劇と言った感じでせうね。
……もっとも、その役者に名乗りを上げる魔種を赦すわけにはいかなのです。
無論、私達は――」
「死者を愚弄し、黄泉を嘲る者を斬る。魔種に抗い、そして今を生きるものとして。
魔に魅入られる隙を生む事が赦されぬ状況で最善を選ばねばならないのです」
「最善――最善って、何だったんだろう。
けど、護る事は間違いではない筈なんだ。そう、だよね……そうしなきゃ、誰かが手を差し伸べなければ被害はもっと大きかったから」
「差し伸べられた手が、何時も正解じゃないって知ってる。
私は子供じゃないから、何かを選ばなきゃならないのだって――
お母様……お母様の声が今も頭に響いてる、けど、私は……」
「私は、呼び声に屈しない。スティアちゃんに手を差し伸べるから。
最善は何時も私たちの中にあって、私たちがそれを揺るがせちゃダメなんだ」
「殺して、なんて口にするものじゃないわ。揺るがせない――そうね、そうだわ。
誰かを救うために力を使う事しか出来ない私を恨んでもいい、護るべきもののためだもの、私は諦めない」
「某たちに出来る事があるならそうする。それが忍びの道でござる。
……危機を未然に防ぐことができたのならば其れが良し。そして、最善でござる」
「ああ、最善なんて言葉でいいのかは分からねぇ。
けどよ、一つだけ言えることがあるぜ。
呼び声? 確かに甘い囁きだぜ。世界か、神か、そんなの知ったこっちゃねえ。
――俺達は屈しない。クソッタレ野郎の戯言なんざ、耳を貸す暇もねぇんだ!」