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全ての終わる時

 如何な死力を尽くそうとも竜は屠れぬ。
 人智理外の外に君臨する神を殺すには力も、時間も足りぬ。
 されど、人間の――余りにも小さな営みは、『無力なる積み重ね』は。
 神域の存在とて食い止める奇跡さえ生んだと――そう呼ぶ他は無いのだろう。
 伝説が芽吹く。大いなる傷みを覆い隠して。
 伝説が花開く。そこにある悼みの影さえ置き去りにして。
 伝説は枯れても途絶えまい。そこに痛みがあったから――誰の心からも消え去るまい!





 ――こんなもので我は殺せぬ。冠位如きが倒れても、この滅海の王は……

 ――ええ、ええ。倒せないでしょう。不可能でしょう。貴方は絶海の王、滅海竜リヴァイアサン。
   貴方をこの海で殺せるものなんて、少なくとも私は知らないわ。

 ――……近海の姫よ。何故、人間如きに味方した?

 ――彼等が人間だからよ、リヴァイアサン。私達に百年の、千年の眠りは一時でしょう。
   でも彼等は違う。彼等は変化するし、神託の破滅に抗おうとしている。
   やがて来る最後の日を怠惰に待つ貴方や、私とちがって。

 ――……………。

 ――いいじゃない、リヴァイアサン。少しの時間をあげましょう。彼等に貸してあげましょう。
   今一度貴方が目覚める時、彼等が貴方の神威を忘れたなら、侮ったなら。思い知らせてあげればいい。
   ひとりでは眠らせないわ。わたしも一緒に眠ってあげるから――だから、少し眠りましょう?

 ――貴様は大概に甘いのだな? いや、人間贔屓と言うべきか――





 冠位魔種アルバニアは斃れ、重苦しく絶海を包んだ竜の気配が静まってゆく。
 きらきらと光輝く風景は今はもう居ない誰かに捧ぐ手向けのようであり。
 船上で全てを成し遂げ、見守る戦士達はこの日、この時、この光景を忘れまい。
 彼等は人心地をつく暇も無く。唯、この海での戦いが終わりを告げた事を茫と理解しようとしていた――



※冠位魔種アルバニアが倒され、水神様の封印により滅海竜リヴァイアサンが眠りにつきました!
 状況は錯綜しており、様々な情報が不足していますが――連合軍の勝利です!


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