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紡がれる英雄譚

 詩は紡がれた。
 フェデリア海域の全てに沁み込んで、破滅の未来は変じ――それでも。
 戦いは続くのだ。
 神威は未だ此処に在り。
 神威は未だ海の覇者なり。
「ならば神を堕とすより他はあるまい。総軍前進――神を討てッ!」
 鉄帝海軍遠征艦隊指揮官レオンハルト・フォン・ヴァイセンブルクは最後の号令を下した。
 奇跡を見た。輝かしき神秘を見た。
 水竜が顕現し、神威の一撃を打ち消した新たな伝説。
 その渦中に居て黙した様な戦いが出来るだろうか――いや、否である!
 『これより』はあるまい。『これより』の奇跡を望むのは、自らの無能を宣言するようなモノ。
 紡がれた想いは受け取る。
 しかし奇跡に縋る戦いは出来ない。
 ああ齎した者よ、しかと見てくれ。貴殿らの全霊を無為にはすまい!

 リヴァイアサンの右より攻める鉄帝艦隊はついにその至近へと全軍を到達させた。

 先行した護衛艦はほぼ完全に沈黙し、鉄帝自慢の鋼鉄艦隊は最早見るも無残。
 残るは旗艦ニーベルングのみ――だが。
 それでも誰しも下を向かない。むしろ佳境の最中にて士気は高揚。武威を示せと鬨の声を挙げて
「ビ――ッツ!! おいコラてめぇ、こんだけの状況でまだサボるつもりかよ!!」
「いやねサボりなんて心・外♪ お肌のツヤを考えての事だったのよぉ?」
 さればシラス(p3p004421)が声を向けるのは――海洋艦隊の二割を消し飛ばしたリヴァイアサン最初期の一撃の余波に巻き込まれ、行方不明になっていた筈のビッツ・ビネガーであった。シラス達の決死の捜索の結果、ついに彼を見つける事に成功したのである。
 しかし当の本人はアハハハハ! と笑みを見せており、行方不明になった割には大した負傷の様子すらなさそうに見える。かの人物は『Sクラスの最も華麗で美しく残酷な番人』とも言われ、名を轟かせる人物でありその実力は折り紙付きだが……自らよりも強い存在との戦いは趣味でない側面を持っていて。
「……つまり神話の生物との戦いなんてお断りだと思ってたんだな」
「まぁ近付く狂王種は片付けてくれていた様だし、深くは追及しない事にしておこう」
 まったく、と。シラスと同様にビッツを探していた羽住・利一(p3p007934)や伏見 行人(p3p000858)顔を見合わせながら頷いて。
「とにかく見つけたからには参戦してもらうわよ! 貴方だって、死にたい訳じゃないでしょ!」
「そうアル! 今こそ流れはコッチに来ている次第……今を逃せばどうナルか分からないアルよ!」
「んもぅ、分かってるわよ。それにそんなに熱烈なラブ・コールなんて受けたら……仕方ないわねぇ」
 だがとにかく。船の残骸に紛れてやり過ごそうとしてた時はともかく――その存在がついに見つかってしまえばやむなしとビッツもリア・クォーツ(p3p004937)や王 虎(p3p007117)の発破に乗せられる形でリヴァイサンを見上げる。
 如何に戦いの相手として趣味ではないとはいえ、では無抵抗に死ぬかと問われれば話は別。
 故にビッツ本人も神威に向かう心を定めれば……ついに鉄帝方面の戦況は最高の状況を迎えたのである。
 鋼鉄艦隊は大部分が喪失し、しかしイレギュラーズ達の奮闘により最後の一隻はまだある。
 多くの戦力は残り、重ねられた攻撃は決して無駄ではなく。
 少なくない血がリヴァイアサンからは流れているのだ。

 神威は、打倒できる。

 眠らせるのだあと一歩。一歩で足りなければ二歩でも三歩でも。
 往け。
 明日を見据えろ。未来を視ろ。希望の光は必ずある!
「よし……一緒に行こうね、焔ちゃん! 滅海竜だって一緒なら怖くない!」
「パルスちゃん……! うん! 一緒に行こう!! 一緒に――勝とう!!」
 パルス・パッションと炎堂 焔(p3p004727)は手を繋いで。
 嵐の中の暴風であろうと向かってゆく。その煌めきは流星の如く。勝利を信じて意思を携えれば。
「よーし! 魔法騎士セララ&マリー参上! マリー! 私達も竜を、倒しに行こう!」
「お、おーうであります」
 びしっ、とポーズを決めたセララ(p3p000273)とハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)の両名もまたリヴァイアサンへと。果敢に向かうその姿、鉄帝兵の心に残る威光の姿は誰しも忘れる事が無いだろう。
 砲弾放て。リヴァイアサンの横っ腹を殴り飛ばせ。
 如何なる場所であろうと鉄帝の魂は在るのだと教えてやれ。
「さぁ皆さん! 神話になろう戦いで、ゼシュテルが臆したなどとみられてはなりません!!
 我らの技術を、知恵を! ゼシュテル鉄帝国の用兵術を――今こそあの竜へ!!」
「然り然り!! 止まぬ嵐など……どこにもないのだ!!」
 ヨハン=レーム(p3p001117)の声は腹の底から。
 ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)の声もまた魂の奥底から。
 紡がれる。旗を掲げよ。
 例え海の果てであろうと我らの魂は不屈であり。
 折れる事無き『武力』が確かにこの世には存在するのだとあのデカブツに叩きつけてやれ。
「下を向かぬ限り我々の歩みは止まらないのだ!!
 天を見据えろ、奴が殴って来るのなら殴り返せ!! 神の威光などなんたるモノぞ!!
 我が国の武威を知らぬ古き神代などに臆するな! 総軍――我が旗を見よッ!」
 振るうは二頭の獅子が在りし紅き軍旗。決して折れぬローゼンイスタフの象徴旗。
 如何なる戦場であろうともそれが武勇を示すに足る場であるならば。
 歓喜せよ。
 敵が強大であれば強大であるほど己が名も轟くのだと知れ。
 さぁ英雄譚を紡ぐのだ。未来の御伽噺に己が名を載せたくはないか!

「この戦いの勝利は目前なり――進めェッ!!」

 声は時として力となる。
 一人一人の声が乗ればそれは雄叫びとなり、波ともなろう。
 滅海竜よ。大海の支配者よ。『陸の波』を感じた事はあるか? 知らぬのならば――

 さぁ――お前に敗北を教えてやる!



 *リヴァイサン右脚側の戦場で鉄帝艦隊の大攻勢が始まりました!

 特別クエスト『斉射三連! 絶望を貫け!』は、そろそろ終了予定です。


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