ネオ・フロンティア海洋王国、首都リッツパーク――
「それで?」
「はい。アクエリアでの攻略戦はこちらの勝利と言えるでしょう。
取り溢しがある事は否めませんが、それもコレからに掛かっています。何にせよ、橋頭堡を得れたことはこれからの攻略にとっても良き報せでしょう」
期待を胸に、興奮冷めやらぬと言った調子の貴族派筆頭ソルベの言葉に海洋王国女王イザベラは大きく頷いた。
「うむ。橋頭堡として絶望の青の島、『アクエリア』を制圧できたことはこれ程嬉しいことはない。
拠点としてアクエリアを使用することで後半の航海も土台を固め盤石に進めることが出来よう」
「けれど、『絶望の青』でしてよ。一筋縄では行かぬのでしょう? 『アクエリア』だって、まだ――」
ソルベの傍らで不安げに口を開いたカヌレは空席になっているバニーユ男爵夫人やアセイテ提督が『普段は着席した場所』を見て、唇を噛み締める。
「……大嵐が何もかもを変えてしまったみたいです」
「そうでしょうとも。冒険と言うのは何があるか分からないからこそ、です。
未知は私達を高揚させ、そして、イベントを与えてくる――まずは目の前にあるアクエリアに関しての問題を取り組むべきでしょう。不安がっていては何もできませんよ」
海洋王国にとっての絶望の青は宿敵と呼び部に相応しい存在であった。
その青い海はのっぺりと広がった壁であり、そして、幾多もの存在を退けてきた脅威なのだ。
幾度となく挑戦したその海の『誰もが行き着いていない』場所。カヌレが不安を乗せるのは、これまでの海での出来事があったからだろう。周囲に広がる不穏な空気に歴史書の中でも語られた不幸な結末――それに、彼女が知己となった友人達が巻き込まれることが恐ろしいのだと。それをソルベとて分かっている。コンテュール家の嫡男として先の大号令を見て、そこに横たわった絶望と失意を見てきたのだ。
「そのように気丈な言葉を吐いておいても、表情は不安と物語っておるようじゃが?」
「なっ……いいえ、しっかりと今後については計算済みです。
ええ、一先ずは『アクエリア』を拠点と使う為に整備を行わねばならぬと考えています」
揶揄う様なイザベラの声音にソルベは何処か拗ねた様に唇を尖らせてからすぐに堂々と宣言する。
先ずは脅威たる魔種を退けたアクエリアを海洋王国の拠点として整備ねばならないのだ。
幾ら、攻略作戦で成功を収めたと言っても、絶望の青の只中に在る事は変わりない。
時間が経過すれば狂王種が襲い来る事は十分に想定のうちだ。
そして、無人島であるアクエリアには拠点と言うにはあまりにお粗末だともいえる。
「拠点整備と、ええ……無人島の探索で出来る限り拠点として付けるように清浄な加護を与えておく必要があるでしょう。
狂王種などアクエリアを拠点にした近海の掃討と、それから、イレギュラーズ達に僅かで慰労を与えるべきです」
「ふむ。慰労をリッツパークとなればアクエリアの整備も遅れてしまうの。
……成程? 悪い、悪いと思ってはいたがそこまで性格が捻曲がっておるとは!」
からからと笑ったイザベラにカヌレが首を傾ぐ。リッツパークで慰労を行わぬならばどこで、と言うのか。
「ま、まさか……?」
「はい。拠点ですからね。アクエリアでの探索と共にバカンスを楽しんでいただけばよいでしょう」
彼らの身を考えれば悠長に事を構えている暇はない。ソルベには『もう一つ』作戦があった。
「『黄金の果実』」
「……何?」
「もしかすれば、それに類似したものが見つかるかもしれませんよ? 何せ、『未知の島』ですから」
※海洋王国の新拠点『アクエリア』にて『拠点整備』『加護準備』『近海掃討』『バカンス』が開始されました!