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三年目のサミット

 特異運命座標は特別な存在だ。
 基本的にはそう仲が良くなく国家間ではいがみ合いも絶えない混沌の首脳達が、その混乱の中心地とも言える幻想(レガド・イルシオン)の宮殿に集結した等という事態は、各国と友誼を深め、各国首脳に特別に信頼された彼等という『てこ』なくしては有り得ない事態だったと言えるだろう。
「ハッハッハ! 特異運命座標達も私達のサプライズにはさぞ驚いている事だろう!
 特別な友人達の記念日を祝うには、やはりこうでないとな!」
「まぁ、な。アンタはつくづく幸せなタイプだと思うけど」
「そうだろう! そうだろう! ああ、私は毎日幸福だとも!」
 肩を竦めた宿敵――ヴェルスに今回の記念祝賀会の『仕掛け人』であるフォルデルマン三世が高笑う。
 彼について思う所がある人物は多かろうが、今回のような機会が生まれ得たのは確かに『そのお人柄』の功績も大きい。
 それぞれ関わり方は違うが、この混沌における主要な各国はその全てが例外なくイレギュラーズの活動により恩恵を受けたか、恩義を感じている所がある。今回の終結は『始まりの日』より三周年を迎えたイレギュラーズを大々的に祝福する為に行われたのだが、発起人のフォルデルマンには実はもう一つ腹案が存在した。
「私は考えたのだよ。彼等は我々に特別を与えてくれる素晴らしい友人達だ。
 故に私は彼等に報いたいと! 特別な贈り物をしたいと!
 そう思ってフィッツバルディ公に彼等をドーンと叙勲したいと言ったのだが!」
 露骨な咳払いをしたレイガルテにフォルデルマンが悪びれずに言う。
「それは間違いなくダメと怒られた! 故に私は彼等に代わりに領地を与えたいと考えている!」
 フォルデルマンの発言に首脳達がざわめいた。
「イレギュラーズを引き込むということか、フォルデルマン三世」
 厳めしい顔に苦汁を刻んだフェネスト六世がその意図を問い質した。
 幻想の国王が中道を取るイレギュラーズに巨大な恩賞を与えるという事はパワーバランスを自己に傾ける行為と見做されて当然だ。それを公言するのはこれより始まる暗闘の『宣戦布告』という事か――
「――いや? 私がしたいのは提案なのだ。皆、イレギュラーズに世話になっているだろう。
 彼等もそれぞれの好みがある。だから私があげるといっても喜ばない者もいるかもしれない。
 だから、私は皆に同じ事をしないか、と誘おうと思ってね!」
 ――いや、コイツは頭フォルデルマンだった。
「アンタ達、ピントがずれてるぜ。こいつフォルデルマンなんだぞ」
 フォルデルマンのあっけらかんとした物言いとディルクのあんまりな指摘に場の空気が一気に和んだ。
 何の事は無い。フォルデルマンは抜け駆け的な囲い込みがしたいのではなく、各国首脳を巻き込んでイレギュラーズにお礼をする機会を作りたいだけ、という事だったらしい。
『何処か一国かが行えば緊張は高まるが、これだけ明け透けならそういう事も無いだろう』。
「……一応、それならば何とか調整します、と陛下には申し上げた次第」
「確かにのう。プライベートビーチの一つもくれてやれば彼等もちょくちょく遊びに来てくれるやも知れぬ」
「アリスと会えるなんてこれは素晴らしい。フォルデルマン三世もたまには良い事を言ってくれるね!」
 妥協したらしく咳払いをしたレイガルテにイザベラやマッドハッターが賛成の意を示した。
 一国が巨大褒章を用意するのは骨だが、各国分担なら負担が小さいのも良い。
 新たに混沌の勢力として認知された豊穣も、政治的意図は兎も角、乗ってくるかも知れない。
「……面白い事を考えますね、勇者王の末裔殿は」
 遥かな昔、赤毛の勇者と言葉をかわしたリュミエは楽しそうに微睡の放蕩王に微笑んだ。
(――彼とはまるで違うけれど、何ていうか。この方はこの方で大物なのかも知れません)
 人が考え付かない事を言う。
 考え付いても普通やらない事を至極あっさりとやり遂げてしまう。
 彼は彼のままなのかも知れないけれど、面影は確かに残っていた。
「いえ、イレギュラーズに会ってから変わったのかも」と彼女は想う――

※サミットの結果、各国に領土が獲得出来るようになりました!
 キャラクターページの右端の『領地』ボタンより、領地ページに移動出来ます!


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