#author("2019-08-21T21:49:04+09:00","","") *TOPログ [#rbf5fff3] #author("2020-10-31T15:18:31+09:00","","") **<北部戦線遭遇戦> [#zc671a88] 「おうおう、ようやく『青薔薇』のお出ましか。 こりゃあいい。不愉快な戦争も、少しは晴れ間も覗いたか」 「戯言を! その薄笑いを永遠に凍り付かせて差し上げますわ!」 古来より、戦争において最も効率的な勝利を望むならば『将を取る』は定石である。 『暗殺令嬢』リーゼロッテ・アーベントロートの――麾下部隊『薔薇十字機関』の得手が『暗殺』であるならば、鉄帝国の守護神『塊鬼将』ザーバ・ザンザが前線に出たこの瞬間こそ、まさに彼女等の真骨頂、最適手を打つ瞬間だったと言える。 「そう猛るな。精々楽しめ」 もう一度「戯言を」と薔薇を激昂させたザーバは、緒戦より幻想の主力部隊を一方的に押し込んでいた。 だが、幻想貴族軍は老獪である。リーゼロッテとザーバのこの遭遇は偶然ならぬ必然――少なくとも幻想側の策の及んだ結果と言えた。主力部隊の損耗を減らしつつ前線を下げる事でザーバを深く引き込んだ『黄金双竜』レイガルテ・フォン・フィッツバルディの采配指揮は、幻想では全く珍しいとしか言いようのない『二大巨頭の共同作業』の意を示す。 リーゼロッテの周囲には何れも手練の暗殺者が十名。ザーバ側の数より多い。 配下が配下を抑える動きを見せ、戦場の『最大武力』同士が激突するのは必然であった。 「仕留めて差し上げますわ――そうやって、無事に戻れると侮っていなさいな!」 黒のドレスがふわりと花開く。小柄な体躯は獰猛な獣よりも尚疾く、一瞬その姿を『ブレ』させたリーゼロッテは、あらぬ死角からザーバの巨体――その首元を掻っ切らんとする。 「侮って等おらぬとも。鉄帝国軍人にとって、これ以上の時間が無いだけよ!」 宙空に赤い軌跡を引いた『爪痕』を軽く躱し、ザーバはリーゼロッテ以上の気を吐いた。 「お前こそ、相手をきちんと覚えておけ。 今日の相手(このおれ)は『慣れた暗殺(おあそび)』で済む程、甘くは無いぞ!」 ※戦況が更新されています! 南部・北部両戦線の戦いが激化しています!