#author("2020-11-22T03:00:50+09:00","","") *[[TOPログ]] [#kbf2a98a] #author("2021-03-21T18:13:35+09:00","","") **Common Raven [#mcbb9838] ――ラサ、首都『ネフェルスト』。砂漠地帯に存在する一際大きなオアシスを中心に築かれたこの都はサンドバザールで賑わい、その風光明媚さより『夢の都』と称される。 ファントムナイトの『魔法』が解けたこの都では今は一つの話題で持ちきりであった。 願いの叶う宝物――色宝(ファルグメント) それはネフェルストより西側、未開となっていた遺跡地帯で発見されたマジックアイテムの一種である。特徴は小さな欠片一つで簡単な傷を治す等、小さな願いが叶う、と言うことであった。 「それで? ファントムナイトの余韻が抜けきらねーフィオナちゃんに何か用だってんですか?」 唇を尖らせるはネフェルストの商会でも有力と数えられる『パレスト』家のフィオナ・イル・パレストである。彼女の視界の先で長い銀の髪を揺らした青年――兄のファレン・アル・パレストは溜息を混じらせる。 妹は奔放ながら、その『愛嬌』で情報通でもある。どうせ、此度呼ばれた理由に察しは付いているのだろうが分からぬ振りをするのだから賢い娘だ。 「傭兵やローレットを介して色宝を収集し、どのようなものであるかの調査を行いました。 結果、色宝とは嘗て、ファルベライズ一帯に座していた大精霊の力の欠片である事が判明したのです」 「それて、パサジール・ルメスの御伽噺っすよね?」 ――嘗てパサジール・ルメスは『ファルベライズ』と呼ばれる地域に住み、精霊たちと心を通わせる精霊使いの一族であった。 自然溶け合うように空と海のそれぞれの因子を持つものが多い多種族部族である彼らは砂漠に住う光彩の精霊ファルベリヒトと共に過ごしていた。 ファルベリヒトは非常に力が強く、その一帯の守神を兼ねていたそうだ。ある日、恐ろしい伝承の魔物が現れた際に、民を守るべく戦った光彩の力は粉々に砕けてしまった。 砕けた光彩の力は『小さな奇跡』を与える色宝(ファルグメント)に変化した。 その悪用を恐れ、パサジールルメスの民は遺跡ごと封印したのだった――そして、彼等は旅に出た。 ファルベリヒトの位置を悟られぬように――光彩の精霊が静かに眠れるように。 「……って、よーく知っている御伽噺っすよ。それで? 『色宝』は本当にファルベリヒトの力の欠片だったって?」 「ああ。それで、この御伽噺はラサに住まう者ならば聞いたことがあるでしょう。……フィオナが知っているように。 ……勿論、パサジール・ルメスも我らが共同体の一員だと認識して語り継がれているのですが。 ――この『御伽噺』を悪戯に今、流布している者が居るようです」 「はっ? なんでっすか?」 その御伽噺は実在するものであるが――しかしソレを意図的に広める事に何の意味があるのか? 色宝には確かな力が宿っている。かつての光彩の力が宿りし一端である、と。 些か考え込む様な様子を見せるフィオナ……だが、ぴーんと来たのか指を鳴らして。 「色宝が『''何でも願いを叶える凄いアイテム''』だって広まってるんすよね? そんなことになれば、パサジール・ルメスを利用して色宝を沢山ゲットできるだとか、そんなワルい事考える奴等が出てくるじゃないっすか! そーいう奴らは砂蠍が潰れたり、ザントマン事件の時の掃討戦で大分減った筈っすけど……でもまた活性化するかもしれないっすよね!」 パサジール・ルメスが『嘗て大精霊に愛された存在』ならば、その力の欠片は彼等に惹かれ合うと言う『噂』までもが流れている。其れはサンドバザールや各地のギルドを通じて傭兵依頼と共に凄まじい勢いで拡散しているらしい。 この機に乗じて『悪い意味』で名を挙げようとする輩も出てくるかもしれない。人の欲望は果てしないのだから。 そして――そんな事になれば件のパサジール・ルメスは。 「ははーん。分かったっすよ? 御伽噺の渦中であるパサジール・ルメスが狙われる可能性があるから護って遣ってくれってことっすね? ああ、それから……『''誰がその噂を流し始めたか''』に見当が付いてるって訳っすね! 流石はオニーサマ。フィオナちゃんも鼻高々っすよ」 ファレンは自慢げなフィオナを見てから黙りこくった。溜息を吐いてから「まあ、そうですね」と呟く。 「で? その『犯人』ってのは?」 「[[大鴉盗賊団>https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4262]]に聞き覚えは?」 フィオナは「知ってるようなー知らないような-」と呟いてから兄をちらり、と見遣る。苦笑を浮かべたファレンは「知ってるでしょう」と揶揄うような目を向ける妹に溜息を吐く。 「最近、国内でちょっぴり話題の盗賊団っすよね。勢力を拡大しつつあるだとか。 目指すは''ポスト砂蠍''! なーんて言ってたっすけど、そんなに注目する存在じゃなかった筈……?」 「その勢力拡大の方法の一つが、色宝だ。[[蠍の王>https://rev1.reversion.jp/page/geniusgame]]の如く、長らく空席になった盗賊王の座に就くために色宝を餌に部下を集めてるらしいのです。 まあ、さもない存在ではあったのですが……大々的に動き出し、色宝の奪取にキャラバン隊への襲撃と言ったいかにも盗賊らしい動きが観測され始めています。 キャラバンは流通の要ですからね。あまり色宝の回収にだけ気を与えられるとネフェルストの平穏も脅かされる。少し……対策を打たねばならないでしょう」 成程、と明るい顔をしてフィオナは頷いた。ならば、大鴉盗賊団の動きを暫くは見張る必要があるだろう。 パサジール・ルメスが色宝と関連があるとし、分かりやすい獲物先の情報を撒きつつ……そして色宝を初期から狙い幾つか確保している己らの勢力を誇示する狙いがあるのだろう。上手くいけば大鴉盗賊団は拡大するし、そうでなくとも悪事を働こうとする者が活性化すればラサ商会やイレギュラーズ達の目をそちらに向けさせる『囮』ともする事が出来る。 想像よりも狡猾な盗賊団の様だ。ファレンの言う様にキャラバンは流通の要……狙われると分かれば放置してもおけない。 しかし――大鴉盗賊団はどうして色宝を集める気になったのだろうか。 色宝は小さな神秘しか宿していない。 とにかく力の為に集めるだけ、というならばそれで良いが何か他に真の目的でもあるならば―― いずれにせよ大鴉盗賊団が、その首領が『何を考えているか』を見極めなければならない。 「ちょーっと大忙しになりそうっすね?」 ――鴉の羽搏きなどさもない事と侮らない。商人は足元を掬われては一貫の終わりだからだ。 &br; ''*ラサのファルベライズ遺跡界隈で変化があったようです……''