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いざや『砂の都』へ!

 首都ネフェルスト――並びにその近辺で行われた戦いはディルク側の勝利に終わった。
 電撃的に行われた各所への奇襲・戦闘でオラクル派は打撃を受け、後退。
 後は残存の勢力を討伐すれば完全に駆逐できる……
「筈だったんだが、妙な事になってきやがったな」
 ラサの指導者『赤犬』のディルクは若干戦火の跡が残るネフェルストを眺めながらそう呟いた。
 首魁であった『ザントマン』であるオラクル・ベルベーグルスの追撃戦で姿を現した『謎の幻想種』の存在が予想外の展開を齎したのだ。幻想種達を縛る原因となっていた、奴隷用の首輪グリムルート――それ自体は本来、魔種であるオラクルの力により制御されていたのだが。
「ソイツが何かヤベー術を使って『全部乗っ取っちまった』らしいっすよ。それまでの間にグリムルートを破壊してたり、解放してたりした幻想種は無事みたいっすけど、間に合わなかったのは……」
「……大分幻想種の数は救出してる筈だからな。
 そこまで多い数が連れていかれた訳じゃねぇとは思うが」
 思うが――その『謎の幻想種』の存在がオラクルを超える強力な魔種である場合少し話が異なる。
 あくまで傾向としての話だが、強い力を持っている魔種は同時に強い『原罪の呼び声』をも持っているケースが多い。『謎の幻想種』がグリムルートを支配し、幻想種を集め、全てにより強い呼び声を放った場合……反転してしまう幻想種も多々出てしまうのではないか。
 フィオナと共に懸念しているのは『そこ』である。
 あと一歩でザントマン事件が解決しようとしているのに、厄介な事になったものだ。
「フィオナ。攫われた奴らの行き先は掴めてるのか?」
「足跡、つーか魔術の跡つーか……方向だけならなんとなく。ただもうちょい時間がかかりそうっすね」
 オラクル派との戦いは勝利したが、首都で行われた戦いには傷跡が残っている。
 それらの後始末にも人を割かねばならない。
 だがザントマン事件解決の為には一刻も早く足取りを追う必要もあり、そちらにも人手が必要で――

「……『カノン』か」

 ふと。状況の切迫に目頭を押さえたディルクが呟いたのは『謎の幻想種』の名だ。
 カノン。カノン・フル・フォーレと名乗ったらしい。その幻想種は、情報によれば。
 その名前は――エッフェンベルグの名に連なる者にとっては『特別な意味』があって――
「あ、あの……」
 と、その時だ。部屋へと一人の幻想種の少女が訪れた。
 不安げな顔をしながら、しかし『理由』があってここへと来た彼女の名前は。
「わ、私メレスと言います。イレギュラーズの皆さんに助けられて……」
「ああ……話は聞いてたぜ。オラクルの爺に連れまわされてたとか、大変だったな」
「い、いえ……それで、なんですけれど。実は、その。私――
 皆がどこに連れていかれたか、分かるかもしれません」
「――そりゃどういう事だ?」
 メレスは言う。自分はグリムルートの破壊が間に合った為、連れてはいかれなかったが。
 直前。首輪を通して呼びかけられた言葉はこうだった。

 『皆で砂の都に行きましょう――』

「『砂の都』……私知ってるんです。ザントマンの御伽噺の続きを」
「……過去の伝承に含められてた、都市の位置情報って事すか!」
 喰いついたのはフィオナだ。『砂の都』と言えば、過去にラサに存在し奴隷売買で栄えたとされる伝説上の都市であり――『砂の魔女』なる存在によって沈められた地でもある。多くの財宝と共に広大な砂漠のどこかに沈んでいるとされるのが定説であったが。
「行けるかもしれないっすよディルク! 今の所掴めている情報とこの娘からの情報を合わせれば大分場所が絞り込める筈っす!! ただ、さっきも言ったすけれど後は人手がどうしても……!!」
「分かってるさ。フィオナ、お前はその娘から話を聞いてやれ。俺は別の奴と話をしてくる」
「別の奴――?」
 決まってるだろ? 赤犬は口端を吊り上げ、猟犬が如くの笑みを見せれば。

「追加の依頼さ。魔種相手に頼りになる――ローレットのイレギュラーズ達にな!」



※<Sandman>事件の報告書が次々と届き、情勢が大きく動きました!
※<Sandman>事件のラサでの攻防の結果報告書が届いています!


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