「知ってるか?」
「何をだよ」
「また殺しがあったらしいぜ」
「嫌なニュースばかりだな。『恋する殺人鬼』だろ。何だって急に大暴れを始めたんだ」
「ジョンボードクラブもだ。どいつもこいつもイカレてやがる。
それにそれだけじゃないぞ、余り大きな声では言えないが、あのサリューが……大混乱だと」
「クリスチアン・バダンデールの『王国』が暴動とか……何があったんだ」
「……世も末だな。で、例の『不吉なサーカス』はどうなんだい」
「絶好調さ。評判が評判を呼んで、国中から観覧客が集まってるぜ。
こっちとしちゃ王都にカネが落ちるんだから様々だ。全く有り難い話だが」
「噂は笑えねえが噂だからなあ。連中、おかしな動きはしてないんだろ」
「官憲じゃねえから知らないよ。唯、『花の騎士』様とかはしっかり見張ってるって噂だぜ」
「流石!」
「ま、王様はともかく彼女が動いてるなら安心だぜ」
「そうそう。ま、事件は王都だけじゃないんだ。サーカスは関係ねえよ。単なる噂に違いねえ」