コン=モスカの祈祷――海洋王国の旧きに信じられた伝説の一つである。 航海に赴く勇者に様々な加護を与えるとされるそれは、死に至る呪(やまい)、絶望の海の『絶望』を煮詰め合わせた不吉と怨嗟のスープたる疫病『廃滅病(アルバニア・シンドローム)』という脅威が姿を現した時、対抗策として講じられた海洋王国の切り札だった。
深海に住まう神々を信奉し、絶望の青を聖域と捉えた独特の宗教観を持つ絶望の青に隣接した辺境伯コン=モスカによる祈祷は旅立つ者の行く先に幸福と加護を与えるといわれている。
呪(のろ)いには呪(まじな)いで。
まさに今、近しき死に向かい合うイレギュラーズを助ける事は出来なくとも、その呪いを緩和する事は出来るやも知れぬ――それは淡いに期待に過ぎなかったが、縋るべき光の道筋である事も確かだった。
コン=モスカが対抗に用意した手段は、聖域が一つ、オパール・ネラで行う大儀式である。儀式に使う宝珠を多く集める事で、加護の力を高めることで廃滅病全てを消し去れずとも、少しでも進行を遅らせられるならば――そう信じた多数のイレギュラーズはがオパール・ネラへ向かったのは当然の帰結であった。更には現在も、儀式一帯近海の清浄を保つが為の掃討作戦が継続して行われている。
「クレマァダ」
コン=モスカの祭司長、クレマァダ=コン=モスカへと声をかけたのは彼女の『かたわれ』たるカタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)はそっと手を差し出した。
「一緒に」
「……うむ」
それがこの双子の背負った宿命であった。
深海を思わせた祭壇に並んだ供物、そして周囲へと点在させた宝珠は煌めいていた。
美しい――それは、上空より見遣れば天蓋の星の如く煌めいている
昏き海の底であれど、闇に染まった天蓋の空であれど、そこに輝くものあらば星海と呼べるのではないか。
これ程までに大規模な祈祷をしたことはないと緊張を滲ませていたクレマァダはかたわれの手をそっと握った。
「怖い?」
「そんなわけなかろう」
「そっか」
「怖いか?」
「ううん、怖くはないさ」
けれどね。
カタラァナは目を細める。かたわれの掌は冷たく、そして、自身の体温と混ざり合ってひとつになるようだった。
「きれいだな、と思って」
人々の希望が輝いて。
人々の期待が煌めいた。
そうして、コン=モスカの祈祷は続けられる。
死を遠ざけるが為――『奇跡』にまでは届かなくても、『希望』にはなれるはずだから。
人は『嫉妬』あらずに――人を、仲間を助ける事も出来るのだから。
※『輝きのコン=モスカ』の参加状況、プレイングより、コン=モスカの奇跡が発生しました!
この効果でPCの受ける『死兆』リミットが50→82になりました!
この効果は以後発生する死兆判定にも適用されます!