ラサ――その砂漠地帯には無数の遺跡が存在している。
例えば、深き森より逃げ果せた⼄⼥カノン・フル・フォーレやその信奉者達が聖地とした遺跡。
例えば、錬⾦術が⾏われていた狭苦しいアカデミアと呼ばれた⼩さな遺跡。
歴史を紐解くヒントになると研究する者は数多く、此処――『FarbeReise(ファルベライズ)』も同様に学者達の調査が盛んに⾏われていた。
「ファルベライズ――っすか」
そう、呟いたのはリヴィエール・ルメス(p3n000038)であった。⼤きく頷いたのはリヴィエールと同じ移動する少数部族である『パサジール・ルメス』の商⼈、レーヴェン・ルメスである。
「そう。此処、ファルベライズは御伽噺があってね。リヴィも聞いたことはないかい?」
「ありますよ。けど、それがここだって⾔うなら……」
――それは余りに運命の悪戯が過ぎる、と少⼥は⼝にした。
2つの宝⽟――⼀⽅はレーヴェン率いる隊が、もう⼀⽅はリヴィエールが率いる隊が⼿にして探索を⾏った『⼆重構造』の遺跡の外郭部位。学者陣営だけでは難航した探索も特異運命座標の協⼒のお陰で⼀歩前進したようだ。
外郭より内郭へ進んだその場所には宝⽟や宝⽯、様々な形のマジックアイテムが落ちていた。⼀つ⼀つを眺めるリヴィエールはつん、と躓き勢いよく転ぶ。ぶえ、と潰れた悲鳴を上げる彼⼥の傍へと学者達と話していたレーヴェンは慌てたように駆け寄った。
「あ。リヴィ、怪我を」
「かすり傷っすよ……レーヴェン?」
傍に落ちていた鮮やかなエジプシアン・ブルーに染まった⼩さな宝⽯を拾い上げたレーヴェンは緊張したように唇を震わせる。
「――『傷を治せ』」
願いが、光を帯びてリヴィエールの⼩さな擦り傷へと吸い込まれる。ひりついた痛みが消え失せて傷⼝さえも『なかった物』になったことに気付いてリヴィエールはぱちりと瞬いた。
「……消えた?」
「御伽噺の⼀節通りだね。学者の皆とさっき話したけれど……この遺跡の内部に眠っているのは⾊宝(ファルグメント)で間違いないよ」
それは――パサジール・ルメスに伝わる御伽噺だ。
嘗てパサジール・ルメスは『ファルベライズ』と呼ばれる地域に住み、精霊たちと⼼を通わせる精霊使いの⼀族であった。
⾃然溶け合うように空と海のそれぞれの因⼦を持つものが多い多種族部族である彼らは砂漠に住う光彩の精霊ファルベリヒトと共に過ごしていた。
ファルベリヒトは⾮常に⼒が強く、その⼀帯の守神を兼ねていた。
ある⽇、恐ろしい伝承の魔物が現れた際に、⺠を守るべく戦った光彩の⼒は粉々に砕けてしまった。
砕けた光彩の⼒は『⼩さな奇跡』を与える⾊宝(ファルグメント)に変化した。
その悪⽤を恐れ、パサジールルメスの⺠は遺跡ごと封印したのだった。
そして、彼等は旅に出た。
ファルベリヒトの位置を悟られぬように――光彩の精霊が静かに眠れるように。
「……レーヴェンはどうして、此処の調査に加わったんすか?」
「何でだろうね。どうしてか『呼ばれた気』がしたんだ。リヴィは? そんな気はしない?」
「――あたしも、知らない場所なのに懐かしくて、⼼地よくて……変な気分っす」
⾃⾝らを呼ぶのは光彩の精霊か。それとも――
そして、⼩さな願いを叶える⾊宝(ファルグメント)の事も⼼配だ。
一先ずはラサに持ち帰り『保護』をした⽅が良いだろう。その⼒が何処まで及ぶか分からぬ今、悪⽤を避ける⽬的もある。
「ヒミツ――には出来ないね。私みたいにこの遺跡には調査に⼊る商⼈や冒険者が複数いたから」
「……って事は⾊宝の争奪戦っすか。うん、それでもローレットのセンパイならより多くの宝をゲット出来るはずッス。安⼼して下さい。あたしのお墨付きっすから!
さあ! 傭兵連合にも協⼒を仰いでトレジャーハンターの始まりっす!」
*ラサ:ラサで⾊宝(ファルグメント)なるアイテムが発⾒されたようです!
*カムイグラ:巫⼥姫⼀派が⼤規模な⾏動を開始しました!