ギルド『ローレット』が本拠を構える幻想(レガド・イルシオン)という国は無辜なる混沌でも最も長い伝統を誇る大国です。
 元々は伝説的勇者が打ち立てた国と言われており、勇者が生涯をかけて踏破を目指したという『果ての迷宮』は数百年以上の時間を経た今も、未だ踏破されていません。果ての迷宮は王都『メフ・メフィート』中心部に存在する為、彼はこの迷宮を踏破する為に国を建てたとも言われています。
 幻想は、肥沃な平原部を主要な領土とし、海洋(ネオ・フロンティア海洋王国)とも隣接する幻想は物流の要衝でもあり、古くから経済的に栄えていました。
 神と呼ぶべき大いなる意思への信仰心が強く、超常的力への畏怖と憧憬の強い幻想は魔術技術的な素養が強く、そちらの方面でも発展を遂げています。
 しかし、昨今は幻想を大国、強国であると言い続けるにはどうやら難しい情勢を迎えているようです。
 建国からの伝統と誇り、勇者と呼ばれた建国王の理念を受け継いでいた筈の幻想は、長過ぎる時間の経過により、澱み、腐敗し切っています。
 元々封建制的な王侯貴族による統治が為されていた国ですが、様々な国難や時勢の変化により、王家の力は削がれ、門閥貴族達の台頭を許す結果となりました。
 近年の幻想貴族達の大半は領民の人権や生活を一顧だにしない非常に選民的な思想に染まっており、国の統治状態は悪化の一途を辿ってきました。
 それでも辛うじて幻想はかつての強国の面影を残し続けてはいたのですが、六年程前、先代国王のフォルデルマン二世が崩御したのを切っ掛けに事態は最悪のステージへと進んでいます。
 若干十五歳で王位を継いだ今代フォルデルマン三世は覇気に乏しく、享楽的で、政治への興味が全くありませんでした。父王がギリギリの所で抑えつけていた大貴族連合はこれを幸いに国を完全に私物化しています。現在の幻想は三つの主要貴族勢力が睨み合う形で危険な駆け引きを続けています。
 彼等は民政に興味は無く、基本的に『己の願望を叶えるため』以外には動きません。又、その為に簡単に他者を犠牲にします。
 近年は弱体化の影響により、北方のゼシュテル鉄帝国から侵攻を受けたり、東方の聖教国ネメシスと小競り合いをしたりしています。
 そういう時だけ一致団結して既得権益を守ろうとし、かつ私欲の為ならば能力を発揮するのが幻想貴族の性質の悪い所です。
 貴族達は相変わらず信仰と果ての迷宮を踏破するという建国以来の悲願には熱心です。
 もっとも、前者は要約すれば『俺は神に認められた貴族だから何をしてもいい。そして、俺と俺の権力を認めた神は侵さざるべき存在で尊くあるべき』。後者は『建国王の悲願を俺が果たし、至上の名誉を得たい』という非常に自分本位な理由なのですが。
 幻想は人種の坩堝ですが、人間種(カオスシード)が支配層に多いです。

https://rev1.reversion.jp/backborn

*幻想:サーカス団『シルク・ド・マントゥール』

 メフ・メフィートにやってきた夢想楽団――シルク・ド・マントゥール。
 その華やかさに、国王含め、国民は心を奪われます。
 しかし、華やかな公演の光に隠れて、蠢く闇は確かに行動を開始していたのです。
 幻想中に蔓延する狂気、やがて狂い出す人々、各地の蜂起、『たのしい公演』。
 サーカスのもたらした闇はやがて幻想中を巻き込む大事件へと発展していくのでした……
 事件を『魔種』の影響と考えたローレットは好機を見据え、国王によるサーカスの庇護を撤回させんと乾坤一擲の作戦『ノーブル・レバレッジ』に打って出ます。
 商都サリューの王クリスチアン・バダンデール、大盗賊キング・スコルピオも暗躍する中、イレギュラーズは全てを勝ち抜き幻想を平和な姿に戻せたのでしょうか……?

出典元:これまでのお話。幻想:サーカス団『シルク・ド・マントゥール』特設ページ。
https://rev1.reversion.jp/page/circus_2018


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