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クラースナヤ・ズヴェズダー

「ふーむ……他国の動きも面妖な事になっているようだな」
 鉄帝。その首都スチールグラードの一角にて新聞を片手に持つはマカールという人物だ。
 かの国で身分や生活水準の平等を掲げる教派『クラースナヤ・ズヴェズダー』に属する彼は『イオニアスの乱壊滅! 果ての迷宮に異世界が!?』と書かれた主に幻想で発刊されている幻想タイムズの新聞を一つ。
 これは先日幻想のローレットのとある情報屋の元に侵入……もとい押しかけ……もとい訪ねて強引に排除された際のついでに手に入れて来たモノだ。彼は教派に属する司祭の一人として鉄帝の各地を巡る事があり、もののついでに他国に足を踏み入れる事もあるにはある。
 先日もラサ側の国境付近で聞いた話では魔種に対する大規模な動きがあったとか。
「しかし幻想の乱もラサでの事件も解決に向かっているとか!
 ハッハッハこれは良い事だ――」
 彼は鉄帝の人間ではあるが、どこの国・民であろうと混乱が落ち着くならば良い事だ。
 そう、良い事であるからこそ。

「……我々ももう少しばかり踏ん張らねばならないな」

 最近は鉄帝でも色々面倒な事がある故にとマカールは思考する。
 鉄帝は混沌の中でも北に位置する国家であり、厳しい気候の中にある。その環境の中で培われた肉体の強靭さは世界的に有名であるが――同時に極寒であるからこそ伸びない経済の脆弱性は長年の問題でもある。
 貧富の差は必然としてスラム街を形成し……そして最近そのスラム街ではある『動き』があって。
「――こんな所にいたのか、マカール。『話し合い』に行くぞ」
「おおダニイール殿。なんと……もうそんな時間ですか」
 その時、マカールの前に表れたのは同じくクラースナヤ・ズヴェズダーの一員、ダニイールという人物だ。新聞を畳み、マカールは立ち上がって。
「今日もまたスラムの一角をなんとか説き伏せよう。
 場合によってはアナスタシアの小娘が出張ってくるかもしれんが……」
「『革命派』とのゴタゴタは、なんとも勘弁してほしいものですな。我々は本質的に同志・同胞であり、ただ些か……信義の違いがあるにすぎない。そもそもアナスタシア殿とも全く知らん仲ではないもので」
「無論分かってはいるが――それはあちらの出方次第だろうな」
 クラースナヤ・ズヴェズダーには二つの派閥がある。
 大多数を占め、帝国と上手く付き合いつつ可能な範囲で理想を実現しようとする『帝政派』――マカールやダニイールがこちらに属しており。もう一つは少数派で、帝政を転覆させて国の実権を握る事で理想を実現しようとする『革命派』と呼ばれる集団だ。
 彼らは今、スラムを中心にある活動に取り組んでいる真っ最中で――


「これも多くの貧しき民を救う為。この地域から一度、平和的に彼らには立ち退いてもらわねばな……」



 鉄帝国でクラースナヤ・ズヴェズダーという組織に動きがあるようです……?


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