#author("2020-10-31T23:51:29+09:00","","")
*[[TOPログ]] [#p7c35a5d]
#author("2021-03-21T18:20:24+09:00","","")

**ファルグメントを集めて [#q8984a87]
『FarbeReise(ファルベライズ)』――ラサの砂漠地帯に⾒つかった遺跡群の名前である。
 その場所には光彩の精霊と『願いが叶うお宝』の御伽噺が存在しているそうだ。御伽噺を信じるほどに[[『緋狐』チー・フーリィ>https://rev1.reversion.jp/guild/1/thread/4058?id=1009190#bbs-1009190]]は夢⾒がちではない。然し、その御伽噺が真の事であったというならば――

 ラサは『有⼒傭兵団⻑による多頭合議制』による国家であり、『⾚⽝』と呼ばれるディルクが実質的な指導者の座についてはいるが、王ではない。必要に応じて⾏われる商⼈と傭兵による会議の場で議題に上がったのがこの遺跡群の事であった。
「願いを叶える、と⾔われて簡単に信じる商⼈はいない。勿論、それが商⼈としての必要な才だ。信ずるべきを選び、的確に商機を⾒出す。……だからこそ、⽤意した」
 そう⼝にしたのは有⼒商⼈の筆頭たるファレン・アル・パレストである。彼の背後ではその巨躯を屈めて退屈そうにしていた『凶(マガキ)』のリーダー、ハウザーが⼤⽋伸を⾒せた。
「ハウザー」
「……おうよ」
 窘めるファレンの⾔葉に溜息を混じらせたハウザーが⾰袋をテーブルへと投げて寄越す。
 がしゃりと⾳を⽴てた⾰袋には輝かしき宝⽯が数個乱雑に放り込まれていた。
「これが『願いが叶う宝』?  ⼀⾒すれば普通の宝⽯のようだが……」
 座についていた商⼈の⼀⼈[[ラルグス・ジグリ>https://rev1.reversion.jp/guild/1/thread/4058?id=1028221#bbs-1028221]]は袋から宝⽯を取り上げてまじまじと⾒遣った。
「その姿は関係ない。宝⽯もあれば、ティアラやリング。はたまた剣のような物さえも存在するようだ。まあ、これはファルベライズを探索した特異運命座標からの報告だが――」
外郭から『仕掛け』を解き進⼊した先には無数の宝が眠っていた――

 ⾦銀財宝ではない。そう称するにはあまりにもカラフルな遺跡に眠る宝たち。
 それらの外⾒など問題ではなく御伽噺に語られる『願いを叶える』の部分を重要視するべきだろう。
「これに願いを叶える⼒がある、と?」
 ラルグスに肯いたハウザーは「誰か怪我してるヤツはいねェのかよ」と商⼈達を⾒回した。
「怪我ってのは度合いはどれ程でも良いのかい?」
「ああ、チー。何だァ?  ⼝内炎でも出来たのかよ」
「今し⽅、紙で指先を切った程度だよ。アンタこそ⿐が詰まってんじゃないかい?」
 揶揄うチーにハウザーは宝⽯を⼀つ投げて寄越す。その指先の傷が治るように願えと⾔うことだろう。

「――傷よ、治れ」

チーの⾔葉の通り⼩さな切り傷は直ぐさまになかった物のように修復されていく。わ、と驚いたラルグスは「⾒たならば信じないわけにも⾏かないな」と呟いた。
「……ソレで?  珍しい宝を⾒つけました、で終わりというわけじゃないんだろう?
 そもそも、この宝⽯はどれだけの願いを叶える?  その度合いによっては――」
 悪意を持って使⽤される可能性がある、と。
 それはこの場の誰もが考えた。例えば、幻想種を売り物にした商⼈達の事が記憶にはちらついた。彼等のような存在が悪しき事を願い叶えられた場合――
 ぞ、と背筋に⾛ったのは嫌な想像だ。チーはイヤだねと⾊の抜け落ちた宝⽯をテーブルに投げ捨てた。
「多くを集めればより⼤きな願いを叶えられるだろう、と推測されている。しかし、それが『正しく叶う』か『歪に叶う』かは定かではないだろうな」
「あァ、だからこそクソ⾯倒だが傭兵連合側はそのお宝――''ファルグメント''をローレットとの協⼒体制でネフェルストに確保する事になった」
 武闘派であるハウザーにとってトレジャーハンターという仕事は詰らないことだったのだろう。
 ファレンの傍から顔を出した彼の妹、フィオナは「ハウザーってば、戦えないことに拗ねてるっすよ」とつんつんと獣の頬を突いている。
「うるせェ――で、商⼈側はどうすんだ」
「ファルグメントの売買を禁⽌したい。賛同する者だけ先ずは残ってくれ」
 ファレンの⾔葉に、席を⽴つ者が幾許か存在した。彼とて有⼒な商会を率いるだけで、指導者でも王でもない。その意に反する者が居るのは当たり前だ。
 座についたままのラルグスとチーは「それで?」とファレンに問いかける。
「傭兵達と同じようにファルグメントをローレット共に収集したい。ハウザー、決定事項を教えてくれ」
「先ずはネフェルストでのファルグメントの保護だ。これは悪⽤されないようにする⽬的だ。
 次にファルベライズの探索と御伽噺徒やらの精霊の安否の確認だとよ。
 最後は――『クソみてェな悪⼈共』を炙り出して殴る」
「最後のはアンタを納得させるためのオマケだろう」
 そう⾔ったチーにラルグスは「そうだろうな」と⼤きく肯いた。
 武闘派たる彼がこうしてメッセンジャーを務めるのも最後のオマケに釣られてきただけに過ぎない。
「で?  その『クソみてェな悪⼈共』というのは⾒当はついてるのかい?」
「まあな。ブラックマーケットでも時々盗みを働く『⼤鴉盗賊団』って奴等なんかの動きも気になる――とディルクが⾔っていた」
 伝えろ、と⾔われたのだろうとラルグスは⼩さく笑う。
『⼤鴉盗賊団』を始めとした盗賊団に席を⽴った商⼈達。ファルベライズに挑むトレジャーハンターの数は多いという事だろう。
「あと、伝えろって⾔われたことは?」
「御伽噺に出てくるパサジール・ルメスって奴等が『ファルベライズに呼ばれた気がする』だとよ。
 そっちについてもファルベライズについて探索と研究を進めていけば真実が分かるんじゃないか――とイルナスが⾔っていた」
 またも、伝えろと⾔われた事がありありと分かる。
「有難う。ハウザー。と、⾔うわけだ。⼀先ず我々はファルベライズの探索とファルグメントの保護を優先しようと思う」
 協⼒を頼むと頭を下げたファレンに幾⼈もの商⼈が了承を告げた。

「――『⼤鴉盗賊団』ね」
 チーは呟く。ブラックマーケットでも盗みを働くそれがどのような動きを⾒せるのか。
 ……少しばかり探ってみるのも良いだろう。『情報』は⾼く売れるのだから。

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''*ラサ:ラサで⾊宝(ファルグメント)なるアイテムが発⾒されたようです!''
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