#author("2019-08-21T17:47:52+09:00","","") *TOPログ [#t5f0ddd1] #author("2020-10-31T16:05:11+09:00","","") **拡散する暗黒、そして『冠位傲慢』 [#la1e4fda] ベアトリーチェ・ラ・レーテが人の像を喪った時。 彼女より噴き出した闇は一帯に拡散し、空を覆った。 黒霧が自身とは真逆の属性を帯びている事をイレギュラーズ達は本能的に察していた。 即ちそれは<滅びのアーク>を媒介する意志を持った呪いである。 彼女は『強欲』だから。 滅びても、世界を諦めない。愛を諦めない。 『胡乱と思考さえ持たない悪意』が人智の外より世界を蝕む。 「……っ……!」 息を呑んだのは誰だっただろうか。 戦場の誰もが疲労困憊で余力を持ち得ない。 形を失った悪意がこれより何を始めても、阻止する術は無い―― ……だが、そんな『彼女』を冷然と見つめる者が居た。 「……………」 闇の空より眼窩の全て、眼窩の愚かを見下して。 「……塵芥に敗れるに飽き足らず、アークをばら撒く等とは。いよいよもって『冠位』の面汚しめ」 吐き捨てた男――ルスト・シファーこそ『真の傲慢』。 彼は同属の――認めてはいないのだが――敗退にこの上なく憤慨していた。 <滅びのアーク>を無駄に垂れ流す事は許されない。 さりとて、天よりも高い彼のプライドは『不肖の妹』の『食いさし』風情を相手にする事も許さない。 ルスト・シファーは神経質に怒り、苛立ち、魔性を纏い、解放する。 「せめてこれは感謝するがいい、ベアトリーチェ。イノリはこれを望むだろうさ」 静かな嘲笑と裏腹に世界は軋み、鳴動し、『誰もそうと知らないままに捻じれて歪む』。 大いなる力を以って、世界に拡散した闇を――唯の一撃で消し飛ばした。 拡散した闇が突然消滅したのはイレギュラーズにとって不可思議極まる出来事であった。 絶体絶命に次ぐ絶体絶命、されど残されたのは静寂のみ。 「終わったのか……?」 思わず問うてしまう程に懐疑的な一言。 答える者は誰も無いが――それ以上の異変は何処にも、何も起こらない。 故にこれは終わりだった。 決戦の最中、エルベルト・アブレウの勢力が姿を消した時点で。 今日は――フォン・ルーベルグを襲った史上最大の厄災は、きっともう『おしまい』だった。 <冥刻のエクリプス>ベアトリーチェ・ラ・レーテにて『冠位強欲』が撃破されました! フォン・ルーベルグ決戦はイレギュラーズの勝利です!